地元である名古屋工場に入社後、15年に渡って生産現場を担当。その経験を活かした次なるステップは、工場にある設備の設計やプログラムをすること。そう、ミヨシ油脂は工場内の設備設計の大半を自前でまかなっているのです。先ごろも名古屋工場にある界面活性剤のタンクリニューアルを担当。その過程での苦労と完成後にやってくる喜びとは?
製品づくりのプロから、設備づくりのプロへ
私の地元である名古屋には、ミヨシ油脂の油化部門の工場があります。ここでは、シャンプーやクレンジング剤の原料や洗剤の原料などを製造。私は、この工場に入社し、長い間、生産現場でものづくりに携わってきました。はじめは先輩に習ってやっとできたことが、そのうち一人でできるようになる。実際につくったものが商品になって店頭に並んだときは、本当に誇らしかったのを覚えています。そうして10年も経験を積むと、工場の設備にも興味が湧いてくるもの。当時の名古屋工場には、どんなトラブルにも対処する、棟梁のような大先輩がいました。
その大先輩の背中を見て、自分でも設備の構造を見ているうちに、工場設備のことがわかるように。そうした頃に、名古屋工場の設備に関わることになり、生産統括部と一緒に設備の設計やオペレーションシステムのプログラムを組む経験を積みました。自分が設計した設備システムが完成した後、スイッチを押すと、次々に機器が作動していく様子を目の当たりにするのは、何とも言えない快感。数年前からは、東京本社に異動になり、油化設備だけでなく食品設備も担当するようになりました。
現場からの
「使いやすい」が、喜び
最近、名古屋工場にある両性界面活性剤を入れるタンク設備をリニューアルしました。以前まで使っていたものに修復不可能な穴が開いてしまったのが理由です。問題点もいくつかあったことから、素材や配管についても再検討が必要でした。主な課題としては、両性界面活性剤によって破壊されない素材を選ぶこと、いかに菌を発生させないしくみにするか、そして価格を抑えること。それらを念頭におきながら、素材の特性については技術部、菌の発生については品質管理部門に問い合わせたうえで、フィットするタンクや機器を選定し、各メーカーで見積りました。
ある程度、取り寄せる部材が決まってきたら、現地の名古屋工場に行って寸法を測り、タンクの配置や配管構成、制御装置のしくみを考えた後、設置工事にかかります。このときは、トータルで5カ月くらいかかりました。最後は設計した私がすべてをチェックして、完了。自分が描いたものができたときの達成感は言葉にできません。さらに、生産現場のスタッフが「これ使いやすい」とつぶやいているのを見たときは、感激しました。
生産を熟知しているから、
工場がつくれる
工場設備の設計を自社の社員がつくっている、というのはミヨシ油脂の強みだと思います。どう設計したらスムーズに生産できるか、すべて頭に入っているので、あらかじめそうした設備がつくれるからです。さらに、ミリ単位の調整をしたいときにも、時間もお金もかけずにできます。すると結果として、ものづくりに最適な環境が構築されるわけです。上司は、ものづくりのスペシャリストとして尊敬できる人。そんな人に、基本的に自由にやらせてもらえるのが、やりがい。節目ごとに助言もいただけるので、大きな仕事もやり遂げられる自信になります。
これまで油化設備を担当することが多かったのですが、これからは食品や油化に関わらず設備設計できるようになるのが目標です。東京本社の敷地には食品工場もあるので、日々勉強しています。人間的にめざすところは、普段はライトな感じでいて、結果はきちんと出すルパン三世のような人。それは、名古屋工場時代、チーム内で意見を交わす大切さを教えられたから。これからも、現場の原点を忘れず、風通しの良さと厳しさが両立したなかで、ものづくりを大切にしたいと思います。